泣かない子供   江國香織

泣かない子供 (角川文庫)

泣かない子供 (角川文庫)


江國香織の泣かない子供というエッセイ集を読んでいるのだけど、
どうも気持ちがザワザワして泣けるので、
こんなことをしている。


届かないメールを打ちたいわけじゃなくて、
宛先不明で返ってくるメールを送りたいのだ。


今夜は雨が強くなったり弱くなったりして、
とても普通ではいられない。


会いたいわけじゃなく、
会いたくないわけでもなく、
ただ、
隣に居たらいいのにと思う。


という、宛先不明で返ってくるであろうメールを打ったりしていた。




思考と感情の海に漂いながら眠りに落ちるのと、
情報とそれらを錯綜させながら夜が更けるのを待つのと、
大抵私は後者を選ぶ。
どうしても夜という時間がもったいなく思えてしまうのだ。
朝が来ないでこのまま夜ならいいのにと、
幾度となく思った。


夜は静かだ。
冷蔵庫の音と、どこかを流れる水の音、時々通る車の音。
無機質で冷たいのに、やわらかくどこか優しい。
私がひとりきりでいることを放っておいてくれる。


雨の夜はもっと優しい。
子供の頃の懐かしい感じが、そこらへんを浸た浸たにしていく。
闇の中で聞いていた雨の音。
優しい子守唄。


あなたにも同じように、夜の思い出と気持ちと、
雨の夜の思い出と気持ちがあるのだろうか。
ただ黙って、隣で同じように夜を感じたい、
雨の音を聞きたい。


思っていることは別々でも感じていることが同じならいい。
ただ同じような形をして、隣にいられたらいい。




今日はこれ以上本を読めない。
壊れるように溢れているから。
悲しい気持ちと、ざわざわした気持ちが。
ひとりきりで浸るには、あっぷあっぷしてしまう。


ただこうして夜が更けるのを待って、
眠りに落ちるまでの時間稼ぎをしている。
夜が明けなければいいのに。
雨が降り続ければいいのに。


という、散文を書いたりしていた。


一番初めの「一人になるとき」、
そして「ラルフへ」を読み終えてから、
その夜はもうほとんど前へ進めなかった。


そして今もまだ途中までしか読んでいないのだけど。


江國香織のことを、とても好きになった。