新装版 星々の悲しみ (文春文庫)

新装版 星々の悲しみ (文春文庫)


 宮本輝の作品は、「蛍川」「幻の光」そして「星々の悲しみ」という本当の初期作品しか読んだことがない。そして「蛍川」も「幻の光」もよかったという印象がある。「幻の光」は映画化されていて、映画もとてもよかった。ちなみに監督是枝裕和、出演江角マキコ内藤剛志浅野忠信。いいでしょ?


 「星々の悲しみ」は死の匂いがする作品だった。7編の短編中4編に死に行く人が描かれ、その死というものを通して生きることが描かれている。
 ただ、この作品を読み終わった日、私のまわりで2人の人が亡くなった。だからどうしても、この作品は死のイメージが強い。


 小説や映画から、死を通して生を考えたり学んだりすることはできると思う。けれど現実の死から何かを学んだりすることは、難しいと思った。きっとそれには何らかの意味があり、学べることもあり、感じ取らなきゃいけないものがあるはずなのに、ただ心に鈍い痛みが残るばかりで言葉にできるものを掴みとれない。正確な答えはないだろう。それぞれの心に何がしかの重みを残して、けれどそれは時の流れの中で薄れて行ってしまう。(ただ肉親の死は、私の中で、そこで止まったはずなのに、憎しみだけを流して、死が生きている。)


 私はただ考えなきゃならない。今。死が教えるものを。今考えなきゃ、やがて薄れていってしまうから。水を掴むような答えでも、水に手を入れることが重要で、やがて乾いてしまっても、きっと何かが残るはずだから。


 それもまた、ある種のトパーズなのかもしれない。


 

村上龍の「ラブ&ポップ -トパーズ2-」を読んだのは、確か高校生の頃。その時から私の中で、「今手に入れたいもの」「今手に入れなければ魅力を失うもの」を、「トパーズ」と呼んでいる。