「ぼくのパジャマでおやすみ」 山本文緒

 あったかくて幸せな記憶。内容はほとんど覚えていないけど、この小説を読めばそんな気分になれる、そう高校生の私は感じていた。いつかまたこの小説を読み返す日が来ることを、どこかで予感していた気がする。山田詠美の「ぼくは勉強ができない」みたいに。                                    高校生の頃とはやはり感じ方が少し違った。でもあったかくて幸せな記憶の裾がそっと肌を撫でていき、風のように過ぎていった。