ASIA ROAD

小林紀晴著 講談社文庫 初版04.10.15

彼らは私の過ぎてきた景色の中に生きていた。彼らは自分を知っていた。
私は今もそれを捉えきれない。




穏やかに晴れ渡った空。
私は自分の部屋のベッドで本を開く。
窓から流れ込んだ風が、私を遠く連れ去る。
同じだ。
ウブドで感じた風と。
鳥の声が重なり、風にざわめく葉と、高いところから流れるお昼のサイレン、遠くに農機具のエンジン音。
風が生きている。風が命を含んでいる。
目を閉じて。