2005-07-18 ASIA ROAD 小説 小林紀晴著 講談社文庫 初版04.10.15彼らは私の過ぎてきた景色の中に生きていた。彼らは自分を知っていた。 私は今もそれを捉えきれない。 穏やかに晴れ渡った空。 私は自分の部屋のベッドで本を開く。 窓から流れ込んだ風が、私を遠く連れ去る。 同じだ。 ウブドで感じた風と。 鳥の声が重なり、風にざわめく葉と、高いところから流れるお昼のサイレン、遠くに農機具のエンジン音。 風が生きている。風が命を含んでいる。 目を閉じて。