神様  川上弘美


川上さんが書く神様なら、居てほしいな。


この作品は彼女のデビュー作。
(余談だけど、彼女の作品と言ったら「蛇を踏む」が浮かぶんだけど、その作品で芥川賞獲ってた。)
しかし、デビュー作から川上ワールド全開。まさに原点・スタートという感じがする。



よしもとばななさんにも通じる部分があると思うのだけど、もっと動物的というか、物の怪・現代の大人向け御伽草子という感じ。
くまとピクニックに行ったり、人魚を飼ったり、河童と踊ったり、死んだ人間と話したりする。
「神様」だって、くまの神様だからね。くまの神様って何(笑)?でもね、それが素敵なんだよ。
彼女はこんな風に世界を感じていて、こんな風な世界にいるんだなぁ。



この文庫本の中には短編が9作入っているのだけど、私が一番好きなのは、「神様」や「草上の昼食」でのくまとのやりとりも好きなのだけど、やっぱり「春立つ」が心に残った。


雪の降る頃にしか一緒に居ることができない男、それは生きている人間ではない何かなのだけど、その男との事をカナエから聞く私。カナエは毎年男に呼ばれるように違う世界へ会いに行くのだけど、相手を求めてしまった瞬間、カナエは元の世界に戻されてしまう。しかしある年をきっかけにカナエは男に会いに行かなくなる。それから何十年と月日が流れ、「私」はカナエからこの話を聞くのである。そして「私」と話したことをきっかけに、カナエは今なら「違うようにできるような気」になる。


不可思議で奇妙でごちゃまぜであたたかい世界。
もっともっと世界の境はゆるくていい。


神様 (中公文庫)

神様 (中公文庫)